果樹農家って、冬は何をしているの?

 → 剪定(せんてい)作業に大忙しです!!

 

信州に本格的な冬が訪れ、梨の木が葉を落とすと、いよいよ剪定と言う、枝切り作業が始まります。極寒の信州の冬に、結構、大変な作業なんですが、剪定は、梨の出来ばえを最も大きく左右する重要な作業なので、自然と気合いも入ります。ここでは、そんな剪定作業の様子を紹介していきます。

 

剪定とは、木(枝)を切る作業な訳ですが、まずは、どのような樹形にしていくのか?梨の基本的な仕立てを説明します。

 

上の図のように、主枝と呼ぶ太い枝を作り、そこから発生する枝(結果枝)に実を成らせます。結果枝は、平面的に配置され、どの結果枝にも、均等に太陽光が当たるようにします。なお、先端は、根から吸い上げた養分を、樹全体に行き渡らせるためのポンプの役目を果たし、そのために、垂直に立ち上げておきます。

基本的には、本当に単純な仕立て方になるのですが、思うように結果枝が発生してくれないために、有効に空間を利用できなかったり(実のならない空間が出来てしまう)、古い木になると、主枝が3本や4本あって、主枝Aの結果枝と主枝Bの結果枝が交差してしまったりと、四苦八苦することが多々あります。あと、良い実を成らせるためには、結果枝は数年ごとに新しいものへと更新していく必要があります。ここでも、”この枝を切ってしまうとその年に実がならない、でも切らないと新しい枝が発生せずに、(来シーズン以降に)良い実を成らすことが出来ない・・・”と言う、ジレンマにかられるのです。その辺りのバランスを考慮し、全体として最良の収穫に出来るよう手を加えていくのが剪定作業となります。

 

 

さて、実際の様子ですが、

 

 

 

 

 

 

上左)剪定前、手つかずの状態。細枝も伸び出したままで、鬱蒼としています。古くなり過ぎた結果枝や、混み合って来ている結果枝、どれを切り落としてやろうかと、熟考。

上右)これ!と決めて、太枝切り鋏(太丸くん)で、バッサバッサと切り落としていきます。

中左)最後は、剪定用のノコギリを使って、結果枝を主枝から切り落とします。

下左)切り口には、トップジンMと言う、殺菌剤を塗り、細菌の侵入による、腐食を予防します。言わば、人間が傷をした時に化膿止めの薬を塗るような感じです。

下右)昨年の切り口です。周縁部上半分には、モコモコとした膨らみが見えますが、これは切り口付近の細胞がカルス化し、切り口の癒合が順調に進んだことを示しています。そして、切り口の下からは、新しい枝が発生しています。こうして、主枝の下側から発生する枝は、とても利用しやすくて、今後数年間、良い実をならしてくれるものと期待できます。楽しみ!

 

こちらは、別アングルから。

 

剪定前(左)と後(右)です。ずいぶんとスッキリしました。

 

なお、結果枝の枝先は、少し切り詰めます。こうすることで、今シーズン、新しい枝が元気に伸び出し、養分を吸い上げて、美味しい梨をならせてくれるようになります。

 

 

 

こちらは、結果枝に形成されている花芽です。この芽の中に、葉と花の赤ちゃんがギュッと詰まっていて、暖かな春になったら顔を出してきます。ちなみに、花芽の根元から細枝が飛び出してしまっているので(左)、これを切り落として、スッキリさせます(右)。

 

 

 

 

 

下の写真の枝は、昨年6月3日に降った雹で、皮の至るところが破けてしまったものです(品種は南水)。こんなに傷付いてはいますが、頑張って花芽を形成しています。今年は、自然災害も無く、秋には美味しい梨が収穫出来たらなと思います。(ちなみに、幸水は、頑張りきれず、花芽の形成が、本当に少なくなってしまいました・・・。)

 

 

こうして、11月下旬に始めた剪定作業は、何とか終了して、園全体がスッキリしました。遠くには、雪化粧したアルプスの山々も眺めることが出来るようになりました。 

 

 

なお、剪定が終わった後には、結果枝を棚に縛り付ける”誘引”という作業が待っています。もう少し暖かくなって、梨の樹が水を吸い上げ始めると、硬直していた枝も柔らかくなり始め、縛り付けやすくなります。それを待って、また作業再開です。その様子は、次回のHP更新の際にご紹介したいと思います。