春の仕事−2 〜受粉作業〜

 

さぁ、花が咲きます!勝手に自然受粉してくれると、たいへん助かるのですが、手の掛かる梨、そうは行きません。そこで、人の手を使って、人工授粉を行っていきます。

 

そもそも、なぜ自然受粉ではダメなのか?

梨は、遺伝的な関係で、同一品種のめしべと花粉では、受粉が成り立たないようになっています(自家不和合性と言います)。ただ、梨畑には、複数の品種が植えられているので、ハチなど昆虫の助けや、漂う花粉等で、少なからず、受粉が成立するのも事実です。しかし、近年、昆虫(特にハチ)の数が減ったりで(農薬のせいではないかと言われる悲しい現実です)、それすらあてに出来なくなって来ました。また、梨の果実には、5カ所の種が入る場所があり、この全てに種が入らないと、果肉部分の正常な肥大がなされません。結果、いびつで、味もイマイチな果実となってしまいます。

せっかく作るなら、良いものを!!そのために人工授粉を行っています。

 

    

 

 

>花摘み

 

まずは、花粉採取用の花を摘みます。ヒュバ・アグリでは、まだ、受粉樹が大きくなってないので、普段からお世話になっている、近所の梨農家さんに、分けてもらっています。品種は、ヤーリーという中国梨との事です。この品種は、開花時期が、幸水など和梨より早く、たくさん花が咲くので、花粉採取に適しています。

 

 

 

樹に申し訳ない気分ですが、花は全ていただきました。

 

 

 

今年は、花摘みの時期に、天候不順な毎日が続き(全国的に異常気象でしたね)、花摘みが出来るのか、ヒヤヒヤしましたが、雨の合間に、ささっと採取しました。

 

 

>花粉採取

 

続いては、摘んだ花から、花粉を取り出します。

 

 

 

まずは、左写真にある機械で、花を軽く粉砕し、花粉を含む葯(やく、おしべの先端部分)を回収します。右写真の赤っぽいものが、葯です。

 

 

 

葯を紙の上に薄く広げ(左写真)、待つこと2日ほど。葯の赤い色が消えて、黄色味を帯びて来ました(右写真)。

 

 

 

拡大してみると、赤かった葯が、乾燥して茶色になり、その内側にあった花粉が、出て来ているのが分かります(左写真)。さらに、花粉だけを集めてみると、まるで、きな粉のようですね(右写真)。

これで、花粉の準備は完了です!!

 

 

>受粉作業

 

いよいよ、受粉作業に進みます。受粉に適した開花期間は、長くて2日。品種ごとに、多少のズレがあるとは言え、完全に花の都合に合わせて、短期決戦となります。一年で、一番気の張る、作業です。

 

 

 

上の写真にあった、きな粉のような花粉は、石松子という、ピンクの微細粉末と混合し、かさ増しをしてから使います(左写真)。受粉方法ですが、ちまたには、専用の噴霧機もありますが、ヒュバ・アグリでは、ここにある梵天を使って、1つ1つ受粉していきます(右写真)。

 

 

 

受粉の前後です。石松子のおかげで、どこに花粉が付いたか一目瞭然です。

 

なお、花房にある10個ほどの花の中でも、下から3・4番目の花が、良い果実となるので、梵天受粉では、その花だけを受粉させます(とは言え、他の花も、多少受粉してしまうんですが・・・)。

 

すると、何が良いかって!?

 

素性の良い花のみが結実し、貯蓄エネルギーを優先的に利用することで、将来的に大きな果実となります。もちろん、5つの種が入るような、しっかりとした受粉となります。また、大きい幼果が1つだけになっていれば、後々の摘果作業が楽になります。

 

せっかく作るなら、良いものを!!そのためには、本当に時間が掛かるけれど、可能な限り梵天授粉を行っていこうと思います。

 

 → 夏まで続く、摘果・摘芯作業 の記事を読む。